『Talk Is Cheap:言うのは簡単だ / 口では何とでも言える』。
訳せばその意味を持つワンフレーズに、実にさまざまな背景を持たせることができる。
Chet FakerことNick Murphy(現在は改名して本名を名乗っている)、彼の歌声を知ったのがちょうどこの曲との出会いだった。
R&B / ソウル / エレクトロ等、音楽の肩書きはこの時世において囲うこと自体飽和しつつあるが、何より大きく抱いた印象は『すばらしいSSWに出会ってしまった!』という想いである。
シンガーソングライターとして紡ぐ彼のメッセージ、この声や言葉の温度感には、
暖かさと冷たさの両方を感じることができるのである。
音楽的な観点もありながらも、おそらく彼自身の想いと受け手との距離感の取り方、
言葉の捉え方、総じて云えば彼なりの生き方や思想がそのまま音楽に落とし込まれていると感じる。
実際のところもちろん彼に会ったこともない。
リスナー、音楽家両面の観点として捉えた印象と云うだけの話だが、
その人となりや人間味が音楽に滲み出ているその瞬間を感じれることが、すてきなSSWに出会えたという喜びにつながるのだと気付かされる。
言葉にするのは簡単なこと、言い換えるのなら、言葉は入り口なのかもしれない。
その響きに何を抱き、その本質を感じた上で次の言葉につなげるか。
非常に難しいものであり、非常に素晴らしい探究であります。
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