このコラムは池上のまちで参考にしたいと思った各地で活動している方から寄稿していただいたものです。
先月に引き続き連載してくれている矢津吉隆さん。さてさて1ヶ月経って「小さな工房」ってどうなったの?
「肩の荷が降りた」という言葉が今ほどしっくりと来たことはない。実は、僕が経営していた宿がコロナの影響で休業して先日ついに廃業することになった。僕はクマグスクという名前の「泊まって鑑賞する展覧会」をテーマとしたアートホステルを京都の中心部で2015年から約5年間営業してきた。クマグスクはアーティストの僕が一念発起して始めたギャラリーを併設した宿泊施設だ。僕と妻と数人のスタッフでなんとか今まで切り盛りしてきた。朝は妻が早くから出勤してお客さんの朝ご飯をつくりチェックアウトのお客さんを見送る、お昼からスタッフが来て交代、ベッドメイキングと掃除をして夕方からチェックインのお客さんの対応をする。チェックインが終わればスタッフは退勤、僕は何かあればすぐ駆けつけられるように店からすぐ近くの自宅で(もちろん寝てはいるが)夜中待機している。たとえ真夜中であっても何かあればすぐ駆けつけなければならない。さらに、子供が生まれてからは妻は育児、僕は朝ご飯を週6で担当するなど、まさに生活をこのアートホステルに捧げてきたと言っても過言ではない。24時間365日と言えば少し大袈裟だが、結局、お客さんが客室に泊まっている限り、頭の一部はその為に空けておかなければならないことになる。そんな生活が5年も続いてさすがにもう慣れたと思い込んでいたが、コロナの影響で休業になり久しぶりに「誰も泊まってない日常」を過ごしてみると、びっくりするほど心が軽い。やっぱり無理してたんだなと今更ながら気づいて、その分空いた頭の容量を他のことに使おうと思っているそんな今日この頃。