このコラムは池上のまちで参考にしたいと思った各地で活動している方から寄稿していただいたものです。
スポーツの世界には「イメージ・トレーニング」という実際には体を動かさずに、頭の中で動いている自身の体をイメージしてトレーニングする方法が知られている。アートにもそれと似たものがある。といっても僕以外のアーティストがそれに取り組んでいるかどうかは知る由はないが、今回は、僕が実践している「脳内模擬制作法」を皆さんに紹介しようと思う。
さて、もっぱらそれを実践するのは夜である。布団の中で眠りにつく前、目を閉じた状態で行う。まずは頭のなかに作品の制作に必要な材料を用意する→それらを必要に応じて切る、こねる、穴を開けるなどの加工をする→できるだけ具体的に、実際の手順に忠実に従って制作の手順を踏んでいく→途中でうまくいかなければ最初に戻って繰り返す→それでもうまくいかなけれ他の方法を試す。という具合だ。僕は展覧会が近づくと寝る前に毎日これを行うのだが、これには大きく分けて3つの効能がある。
① 制作予定の作品をつくる工程を頭のなかで具体的にシュミレーションすることで、実際に制作する際に起こる問題やミスを事前にあぶり出すことができる。
② 時間がなく試作品を制作できない場合でも本番を想定したテストを行うことができる。
③ リアルとは違う制作感覚によって予期しない新しい表現の発想がうまれることがある。
こんなことを寝る前にやると目が冴えてかえって寝れないのではないかと思うかもしれない。しかし、これが意外と良く眠れる。案外集中力がいるからか、しばらく続けていると脳が疲れてきて眠たくなるのだ。むしろ、おすすめの睡眠法と言えるかもしれない。時々、降りてきたアイデアに興奮して全く寝れなくなって夜中にスケッチブックを取り出してしまう事があるが、それはアートの神からの贈り物なので丁重にいただこう。「脳内模擬制作法」良かったら皆さんも試してみてください。寝付きの良くない夏の夜におすすめです。