2019年から東急池上線の池上駅周りを中心に展開しているWEMON PROJECTSというプロジェクトの一貫で行っています。真似したいほど魅力的なまちで活動する方との対談記録『Hi,How are you?Vol.3』は松陰神社エリアで、ビールとパンのお店『good sleep baker』を営む小林由美さん。
世田谷線って池上線と似たローカル線だけど、めちゃくちゃ盛り上がってる印象。でもそれが観光名所があるとかではなくて、生活と地続きで自然体な感じがいいなあと思っています。池上に来たこともある小林さん、松陰神社にお店を構えたきっかけの話を始まりに、住んでるまちのこと、池上のことについて話を聞きました。
ちょっと汗ばむ季節の始まり、美味しいビールを飲みながらの対談。時節柄、東京都知事選挙の話がひとしきり盛り上がったあとのお話です。

小林由美/good sleep baker
中嶋哲矢/L PACK.
フクナガコウジ/図案家

good sleep bakerが松陰神社前にある理由。
フクナガコウジ

だから、その政治の話をさ…(笑)

中嶋哲矢

おーい。政治の話、まだ続けるの?(笑)

フクナガコウジ

政治の話を掘り下げるわけじゃないけど、こういう話って広く言えば、政党の話とかもっと大きな話になっちゃうんだけど、もっと身近なところで言ったら、こういう商店街の中にも派閥みたいなものはあるわけじゃん。

フクナガコウジ

そういうのって、会話が足りてないから、派閥が生まれたり誤解が生まれたりするわけだよね。

中嶋哲矢

まぁ会話があったからこその派閥もあるかもしれないけどね。

フクナガコウジ

そういうのもあるだろうね。でも俺が言うケースの場合、会話をすることによって、相手を知ったら仲良くなれたかもしれないってことね。

フクナガコウジ

そういう意味でSANDOのみたいに社交場があるっていうのはすごい大事なことだなと思っていて。

中嶋哲矢

そうだよね。それは大事。
(もぐもぐ)これめちゃうまい。ズッキーニとソーセージのパン。これテイクアウトもできるんですか?

小林由美

もちろんです。さっきも10個くらい買っていってくれましたよ、お客さん。こっからここまでって言われて、1個ずつかと思ったら、乗ってるもの全部だった(笑)

中嶋哲矢

すごい! いいですね。

小林由美

めったにないですけどね(笑)

中嶋哲矢

この場所にお店を決めた理由ってあるんですか?

小林由美

前住んでいた場所が千駄木で、その界隈で探していたんですけど、松陰神社に松崎煎餅っていう煎餅屋さんがあって、そこの方も、以前千駄木らへんに住んでいて。先にこちらに来てお店を構えるってお話をしていたんです。

小林由美

その同時期くらいに、この松陰PLATもできるって話を聞いて、良い雰囲気だから、見てみない? って誘われたんです。でもそのときは谷根千エリアで探そうと思っていたから、全然なんの気無しに見に来たんですけど、このまちの雰囲気がとても気に入っちゃって。

小林由美

谷根千と共通点ってわけではないんですけど、谷根千も古いお店がありつつも、新しいお店も頑張っている雰囲気があって。このまちの商店街もそんな感じで。

中嶋哲矢

たしかに似ている気がする。そこの魚屋さんとか、道にお惣菜も並んでいてすごいよかった。

小林由美

ここに来て4年になるんですけど、そういう商店もどんどん無くなっちゃってきていて。建物の耐震の問題や高齢の問題もあると思うんだけど、けっこう寂しいです。まちの新陳代謝って意味では仕方ないのかもしれないけれど……。

小林由美

もともとこのまちのことをそんなに知っていたわけではないんですけど、昔からこのまちのことを知っている人は、ガラッと変わったね、なんて言っている話を聞きます。

小林由美

私がここにくる前にまちを盛り上げようという流れはあったみたいです。きっとその流れでこの場所も建てられたんだと思うし。

中嶋哲矢

せたがやンソンってあるじゃないですか? あれってなんですか?

小林由美

うちの大家さんがやっているウェブ媒体ですね。不定期で世田谷に暮らす人にフォーカスをあててインタビューしたりとか、餃子マップとかコーヒーマップとかやってますね。

中嶋哲矢

小林さんの好きなまちってどこですか?

小林由美

これまで住んだところ全部よかったけどなぁ。

中嶋哲矢

けっこう移動している?

小林由美

実家のある松戸から始まって、笹塚武蔵小杉谷根千エリア今この辺。どれもすごいよかったなぁ。多分ですけど、あるひとつの飲食店とかそういうところを通じて、まちの人とのコミュニティができたところから、楽しくなってきたんだろうなぁっていうのがすごいあって。

小林由美

例えば笹塚だったら、家の斜向いに酒屋さんがあるんだけど、そこで夜な夜な大人たちが飲んで楽しんでる声が聞こえていて。なんだろうって思って調べてみたら、週に一回大人の部活、泡盛部、っていうのをやっていたんです。毎回一つの銘柄を決めて、それに合いそうな料理だったり音楽だったりをみんなで飲みながら楽しむ会、みたいな。それめっちゃ楽しそう! ってなって、私もそこに入るようになって、まちの中に顔見知りが増えるし、笹塚ライフが楽しくなった。

中嶋哲矢

知り合い増えると変わるよね。

小林由美

うんうん。千駄木のときも同じようにビアパブイシイというお店がきっかけで顔見知りが増えていった。

フクナガコウジ

まわりの人って重要だよね。出会う人がよければ良いもん。逆にこの先どこかに住んでみたいまちってある?

小林由美

今リアルに逗子に住もうかな、っていうか二重拠点ってどうかなって思っていて。お店構えると動けない、ってネガティブな考えもあるんだけど、いやいやそんなことないよな! って思う部分もあって。

中嶋哲矢

僕の知り合いも同じようなこと言ってた。その人も女性の店主だ(笑)

中嶋哲矢

ここは最初からビールとパンのお店でやろうとしていたんですか?

小林由美

そうですね。

中嶋哲矢

面積的にもちょうどよかった?

小林由美

そうですね。なんなら、もっと狭くてもよかった。当初はスタッフさんとか入れないで、一人でやろうと思っていたこともあったし。

中嶋哲矢

外も使えるんですか?

小林由美

使えるんですけど、あんまり使ってないですね。土日とかでイベントをやるときは、中を全部立ちにしちゃって、外にイスを出してって感じで。

中嶋哲矢

あ、普段中も立ちじゃないんだ?

小林由美

そうなんですよ。一応イスがあります(笑)

中嶋哲矢

立ちのみいいよね。

小林由美

オープンするときは立ちのみにしようと思ってイスとかも買っていなかったんですけど、このまちはみんなが帰ってくるまちだから、イスあった方が良いよ、って言われたことがあって。

フクナガコウジ

けっこう夜までやってるじゃない? 座ってるからこそのもう1杯って気持ちになるよね。

小林由美

うんうん。当初は回転率を上げて売上を、って思っていたんだけど、たしかにこのまちはそういう感じじゃないっていうか。もちろんハシゴできるお店はいっぱいあるんだけど、割とみなさんお仕事で疲れて帰ってきて、腰を据えてゆっくり飲む方が多いなという印象です。

中嶋哲矢

もう僕は3杯も飲んでるからね。座りたくなってきたよね(笑)。いや今日三茶から歩いてきたから失敗したなって。

小林由美

お酒飲むと足がむくむからね(笑)。帰るときも歩いて帰ればいいんですよ。

中嶋哲矢

三茶まで!? えぇぇぇぇ。

フクナガコウジ

なんで歩いてきたの?

中嶋哲矢

こういうまちに来るときって、ワクワクがあるからさ、知らないものを発見しようって歩いているんだよね。今日ちょっと早く来ちゃったから、世田谷駅まで歩いたもんね。

フクナガコウジ

だいぶウロウロしてるじゃん(笑)

中嶋哲矢

いよいよ疲れて、松陰神社の大きい公園で休憩してたんだよね。でも帰りってそういう気分にならないんだよね。

フクナガコウジ

わかるよ、それは。そういうもんだよ。行きはよいよいですよ。

小林由美

ははは

まちにあったら良いものとは。
中嶋哲矢

まちにあったら良いものってなんだと思います?

小林由美

すごい変な話ですけど、チェーン店があってほしいと思ってる……。松陰神社って本当に個人店が多くて、噂によると、チェーン店はどんどん潰れていくみたいな。

中嶋哲矢

一応入ったりはしてるってこと?

小林由美

前はちょこちょこあったみたいです。個人店が多いっていうのは、まちの特徴だとは思うんだけど、ときに、私のことを誰も知らない場所で買い物したりとかごはん食べたいって思うことがある。そういうときってありません? さっきの逗子の話も遠くに離れたいみたいなところもあって。

フクナガコウジ

なるほどね。

小林由美

例えばマックとか。マックに行ったところで、多分知り合いには会っちゃうと思うんだけど、ときにお店の人と会話をしなくてもいい空間っていうか。そういうときにあるといいなぁって(笑)

中嶋哲矢

池上も似たようなローカル線だけど、駅前にチェーン店たくさんあるよね。

フクナガコウジ

マック、ケンタッキー。コンビニはファミマ、ローソン、セブン……、ミニストップもある(笑)

小林由美

へぇ〜。

中嶋哲矢

居酒屋もあるよね。一通りあるかも(笑)。

中嶋哲矢

チェーン店がないのに、成立しているって面白いよね。

小林由美

みんな所得が高いんだろうなっていうのはすごい感じるなぁ。

中嶋哲矢

住んでいる人の層はあるよね、たしかに。

小林由美

こういうところに住む人たちは、こういう空間を選んで住んでいるからね、もともと住んでいる人たちは別として。余計そうなっていくのかも。

池上にて。
中嶋哲矢

池上にきたことありますよね? あれ、何時くらいにきたんでしたっけ?

小林由美

お昼ごろだったかな。

中嶋哲矢

SANDOに来た後、どこか行きました?

小林由美

どこも行かずに、そのまま何故か立石に……(笑)。だからまちとか散策できてなくて。そのときは目的がSANDOでやってる展示会だったから、お茶だけして離れちゃったんです。

フクナガコウジ

本当は展示会目的ではじめて池上に来る人たちを、もっと池上に居てもらう流れまでもっていきたいんだよね。

小林由美

でも興味は湧いた。本当に初めての池上だったから、こういう街並みなんだーって。行くのはちょっと大変だけど(笑)。久寿餅やさんとか。

フクナガコウジ

久寿餅は発祥の地なんですよ。

小林由美

そうなんだ!

中嶋哲矢

関東の久寿餅は、久しいに寿と書いて、小麦粉を使っているのが特徴です。

小林由美

わたしこの久寿餅大好きなんです。最近は食べてないけど、こどものころからとても好きで。

中嶋哲矢

へぇ! じゃあ今度持ってきます(笑)

中嶋哲矢

なにがあったら来たいと思います? 池上に。

小林由美

早めに空いてる立ちのみワインバーかビールバーとか。

中嶋哲矢

駅の方にエスポアかまたやっていう酒屋があって、ナチュール系に力を入れていて、16時くらいからやってる。

小林由美

へぇー。飲みたい! そういうのあるんだ。

中嶋哲矢

そういう昔からやっていて、僕ら世代が超いい! ってなる店は多いんだけど、若い人がやり始めて超いい! ってお店が少ないんですよね。そういうのが欲しいなぁって。

フクナガコウジ

ヴァンニとかそういう感じだよね。エノモトにはないようなデザートがあったり。エノモトはトラディッショナルというかね。

コラボレーションについて。
フクナガコウジ

オリジナル商品とかコラボレーションの話とかってないの?

小林由美

コラボとかって、お店側からブリュワリーにお願いするのが多い感じがする。言えばやりましょっかってなるのかもしれないけど……。

フクナガコウジ

僕の仕事柄、どっちからもそういう話を聞くっていうか、どっちもやりたがっている印象がある。

中嶋哲矢

SANDOのビール作って欲しいな。小林さんに。羽田ブリュワリーがOEMでやってくれるから、小林さんが監修みたいな感じで。

小林由美

わたし作れるのかな、ビール……。

フクナガコウジ

朝から飲みたいビールとか。

中嶋哲矢

パンに合うビールとかね。いいじゃん。それやりましょう。

小林 由美 Yumi Kobayashi/good sleep baker

千葉県松戸出身。製菓専門学校卒。2016年6月に松陰神社前の商業施設「松陰PLAT」内にパンとクラフトビールのお店「good sleep baker」をオープン。夜のパン屋であり、ほっと一息つける飲み屋として松陰神社前に日々明かりを灯す。

good sleep baker

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2019年から東急池上線の池上駅周りを中心に展開しているWEMON PROJECTSというプロジェクトの一環で行なっているNEWSANDHOTSANDO。各地で活動している方からのコラムやインタビューから池上の未来へ繋がるヒントを探していきます。

NEWSANDOHOTSANDO ISSUE 03

『Hi, How are you? やあ、そっちはどう?vol.3』ゲスト:
小林由美/good sleep baker

『Tomorrow Never Knows あした何しよう』コラム寄稿:
新城大地郎/アーティスト
山田毅/美術家 ・只本屋 代表 ・ 副産物産店 共同運営、
矢津吉隆/美術家・kumagusuku代表、
稲葉秀樹/yohak 代表
河村実月/文藝誌園・居間主宰
飯田純久/イイダ傘店

デザイン:フクナガコウジ
Webデザイン:石黒宇宙(gm projects)
編集チーフ:丸山亮平(百日)
編集:中嶋哲矢(LPACK.)、小田桐奨(LPACK.)
発刊:2020年7月

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NEWSANDOHOTSANDO ISSUE 03 あとがき

ちょうど一年くらい前、去年の7月にHOTSANDOで取材したのが地元のブルワリー。ON THE PONDOっていう名前のビールが生まれて、SANDOのコーヒーを使ったオリジナルビールも出来ました。暑くなるとビールが飲みたくなるのが当たり前で、今年も美味しいビールが飲みたい季節がやってきた。
今年は同じ都内なのにローカル線を乗り継いでちょっとした小旅行感を味わいながら松陰神社前まで行ってきました。池上と松陰神社、同じ門前町だけど似ていることや、違いってなんだろ?『Hi, How are you? やあ、そっちはどう?』は、汗ばむ陽気の中、パンとビールお店を営む「good sleep baker」の小林由美さんを訪ねました。美味しいパンをつまみに美味しいビールを飲みながらの対談。お店を構えることは偶然の出会いが多いけど、生活の3分の1くらいはその場所にいるんだから、そこ土地に居続けることってやっぱり周りの仲間とかお客さんとか街の良さってのがめちゃくちゃ大事だなってのを実感した時間でした。
『Tomorrow Never Knows あした何しよう』を綴ってくれてる皆さんは、場所のこと、住んでる土地のこと、日々のルーティンなど自分が大事にしていることを教えてくれた7月。
今年もオリジナルビール作ってみんなと一緒に乾杯したいなあ、のNEWSANDHOTSANDOがはじまりました。

Text:Tetsuya Nakajima (WEMONPROJECTS)

Hi, How are you?

『やあ、そっちはどう?』
真似したいほど魅力的なまちで活動する方との対談記録『Hi,How are you?Vol.3』は松陰神社エリアで、ビールとパンのお店『good sleep baker』を営む小林由美さん。
世田谷線って池上線と似たローカル線だけど、めちゃくちゃ盛り上がってる印象。でもそれが観光名所があるとかではなくて、生活と地続きで自然体な感じがいいなあと思っています。池上に来たこともある小林さん、松陰神社にお店を構えたきっかけの話を始まりに、住んでるまちのこと、池上のことについて話を聞きました。
ちょっと汗ばむ季節の始まり、美味しいビールを飲みながらの対談。時節柄、東京都知事選挙の話がひとしきり盛り上がったあとのお話です。

小林由美/good sleep baker
中嶋哲矢/L PACK.
フクナガコウジ/図案家

小林 由美 Yumi Kobayashi/good sleep baker

Tomorrow Never Knows

近所の弁当屋で僕は言う。

「サケ弁1つお願いします。」

飯田 純久 Yoshihisa Iida/イイダ傘店

Tomorrow Never Knows

東京に来てから3回目の引越しを終え、もう2ヶ月が経とうとしている。マンションの入り口には紫陽花がわんさか咲いていて、いつも帰りを出迎えてくれるような気になる。

河村実月 Mizuki Kawamura /文藝誌園・居間主宰

Tomorrow Never Knows

横浜の店舗には自転車で通い始めた。

中嶋哲矢 Tetsuya Nakajima/L PACK.・WEMONPROJECTS

Tomorrow Never Knows

『塩鰹とルッコラとかのサラダ』

稲葉秀樹 Hideki Inaba/yohak 代表

Tomorrow Never Knows

ちょうど現在のアトリエを出ることが決まり、次の候補地だった祖父の広い書斎がその現場。

新城 大地郎 DAICHIRO SHINJO/アーティスト

Tomorrow Never Knows

ロシアのシベリア北部の小さな町ベルホヤンスクで、華氏100度(摂氏約38度)を上回る異常な高温が観測されたというニュースを知ったのは、2020年6月21日の日曜日のことであった。

山田 毅 Tsuyoshi Yamada/美術家 ・只本屋 代表 ・ 副産物産店 共同運営

Tomorrow Never Knows

スポーツの世界には「イメージ・トレーニング」という実際には体を動かさずに、頭の中で動いている自身の体をイメージしてトレーニングする方法が知られている。アートにもそれと似たものがある。

矢津 吉隆 Yoshitaka Yazu/美術家・kumagusuku代表

Hi, How are you?

『やあ、そっちはどう?』

5月に行われた交流記録『Hi, How are you? vol.1』の動画バージョンです。

松島大介/PADDLERSCOFFEE
小田桐奨/L PACK.
facilitator:フクナガコウジ/図案家

デザイン:フクナガコウジ
動画編集:西野正将

WEMON PROJECTS

Tomorrow Never Knows

僕はクマグスクという名前の「泊まって鑑賞する展覧会」をテーマとしたアートホステルを京都の中心部で2015年から約5年間営業してきた。

矢津 吉隆 Yoshitaka Yazu/美術家・kumagusuku代表