HOTSANDO12号 あとがき
それこそ修学旅行で学んだ通りの落ち着いた印象しかなかった京都だったが、一度、外へと踏み出せば、刺激的な人たちで溢れるまちだった。今回は、京都に造詣が深いHOTSANDOのデザイナーでもあるフクナガコウジに取材先のアポイントやアテンドをお願いした。
取材先は、ほぼ同年代(むしろ下が多い)が中心だった。ひとりひとりが独立して自分の店を持つ。それぞれのルーツを探る取材だ。当たり前だが、個々にドラマがあり、語りつくせぬ過去があった。ひとり、ふたりと取材を重ねるにつれ、私の中でモヤモヤが大きくなっていった。この人たちの言葉をしっかり伝えることができるのだろうかと、不安になったのだ。インタビュワ−である我々は、質問のセオリーがある。しかし答えてくれる人にそれはないのだ。私の質問に対して、しっかり考えて答えを出してくれようとするが、それは一言では終わらない。言葉を重ねていくうちに明確ではなくなっていくのだ。
直接文字で表記することのできない、この思いをどう伝えるべきか。文字に起こせばそれはそれは直接的な物言いになる。このグレーとも言える微妙なニュアンスをどう伝えるべきかとても悩んだ。書き足してわかりやすく表記することもできるが、その人の柄を私が汚すことになる。
今回の取材文は、あえてほぼ原文ママの構成で書いている。その場の微妙な空気感や、伝わるようで伝わらない、伝わらないようで伝わる、絶妙な物言いが少しでも感じられればと思ったからだ。
継承というテーマで行った取材だったが、取材対象者全員の継ぎ方があり、考えがあった。しかし共通している点がある。それは、前任の思いを残すこと。ある人は、人のふんどしで相撲をとれることに感謝し、ある人は自信を持って新しいことにチャレンジする。編集の仕事も同じだ。人の思いを継承する。今回の京都出張は、それを思い知らされた取材であった。
(写真は晴れ渡った空の京都五条通り。ここから私たちの取材は始まった)