EVENT

ヴィルヘルムハーツの杖のポップアップショップ

『尚工藝』が北欧デンマークで出会った格好良い補助道具。
毎日持っていて気持ち良い。心配でなく、羨ましがられる。毎日の生活に溶け込む、人のために作られた道具。この杖の日本代理店である尚工藝がポップアップショップを開催します。

人に寄り添い、毎日使うことを考えながら生み出されたVilhelm Hertzの杖には、デンマークの福祉への考え方がしっかりと映し出されています。
デンマークという国の背景とVilhelm Hertzについて、じっくり読み解くポップアップショップにしました。
ぜひ、杖の使い心地を体験しにきてください。

EVENT
尚工藝 在店:
11月17日(日)、24日(日)

デンマークの教育機関「フォルケホイスコーレ」に留学後、同国のVilhelm Hertzの杖の工房で半年間住込みで働くことで、彼らのもの作りの思想を学んだ尚工藝(宮田尚幸)が在店します。杖やデンマークについて、気軽に話し合える場にしたいと思っています。

14:00〜16:00ごろ 「杖を体験してみよう!」
17:00ごろ〜20:00(閉店)「夕暮れハイボールとソーセージと杖」

11月限定開催の『夕暮れハイボールセット』を嗜みながら、杖のこと、デンマークのことについて楽しく語らいましょう。

尚工藝(Nao Kogei)

代表の宮田尚幸が、“愛情あるものづくり”を、福祉の分野中心に提案する活動をしています。

ディレクション / ​デンマークの思想を元に、従業員、会社、社会、世界にとってなにが重要なのか、一つひとつ丁寧に、一緒に考えていくお手伝いをします。

ソーシャルデザイン / ​対話を通じて、問題を解決することを目的とします。何が必要なのか、どこが問題なのかを見出し、社内・社外間の問題や、原因が分からない問題解決に取り組みます。

デザイン / ​機能的だけではなく、美しさや愛情は、使いやすさ・居心地の良さ・精神面の健康に繋がると考えます。それを意識して、物作りのお手伝いをします。

尚工藝という屋号には、尚=更に、工藝=機能的なものに美的装飾を加えること。
また“藝”には草木を育てるという普遍的な価値を追求すること、という意味も込められています。
プロジェクトの一つとして、デンマークにある「Vilhelm Hertz(ヴィルヘルム ハーツ)」という杖の輸入代理店としての活動もしています。

Vilhelm Hertz(ヴィルヘルム ハーツ)

建具屋さんで長年に渡り木を扱ってきた自然と共に生きる職人、Kristoffer Vilhelm Pedersen(クリストファー ヴィルヘルム ピダーセン)と、金属のスペシャリストで0.001ミリまでこだわる完璧主義な職人、Thomas Hertz(トーマス ハーツ)。この2人がコラボレーションして制作する、美しい杖のブランドです。オーダーメイドでひとつひとつ丁寧に、使う人に合ったものをハンドメイドで制作します。

No.1 Buying woods
No.2 Handle
No.5 Metal work3

日本で広めることになったきっかけ

2018年に自身がデンマークの工房に半年間住込みで働き、職人との信頼関係を築く上で言ってもらった「日本でこの杖を広めることはお前に任せた」という言葉から、このプロジェクトが始まりました。
ロフストランドクラッチ(前腕部支持型)という種類の杖をメインに提案しています。

Vilhelm Hertz(ヴィルヘルム ハーツ)の杖の特徴


愛着を持って長く使うことを意識して、一つひとつ丁寧に、手で作られています。
その為に、使う素材も考え抜かれています。
革は人に合わせて形を変え、木も革も汗を吸う。自然には気持ちいいものがたくさんあるのです。
それにユニークな素材“カーボンファイバー”を組み合わせることで、軽くて頑丈な杖が出来上がります。
カーオンファイバーのしなやかさは、歩くときの衝撃を吸収してくれます。

・北欧デンマークで出会った格好良い補助道具
・毎日持っていて気持ちが良い
・心配されるのではなく、羨ましがられる
・毎日の生活に溶け込むために作られた道具

【特徴】
①|だれが見ても格好良い松葉杖は、持っていて気持ちが良いものです。

デンマークでこの製品を使用しているお客さんからこんな話を聞きました。

「今までは人と会うたびに『その脚どうしたの?大丈夫?』とか、
まず心配されることから会話がスタートしていたから、外に出るのも億劫になっていたんだ…。
でもこの松葉杖を持ってからは『その杖かっこいいね!どこで手に入れたの?自分も欲しい!』と
羨む声に変わったから、自信がついて外に出たくなったんだ。人生がまるっきり変わったよ!」

この話を聞いて、とても感動したことを覚えています。

②|構造に使われる素材に多くの価値を見出せるようにしました。選んだ素材は美しく、何年も長持ちします。

自然素材を使用することで、利用者の身体にかかる負担を軽減してくれます。
革は人に合わせて形を変えるので、じっくりと身体にフィットしていきます。
木も革も汗を吸うので半袖でも使用でき、水ぶくれや汗疹にもなりにくいのです。
各々のパーツや素材にもサステナブルなストーリーがあります。

③|芯の部分に木材またはカーボンファイバーを使用することによって、肘、肩への負荷を軽減してくれます。

カーボンファイバーのロッド(棒)は驚きの軽さ、柔軟さ、そしてとてつもない強さを持っています(300kgもの荷重に耐えられるのです)。
そして毎歩ごとに地面から腕にかかる衝撃を、この素材のバネ性が和らげてくれます。
新しい素材と自然素材とのコラボレーションもこの杖の特徴の一つです。

Vilhelm Hertz(ヴィルヘルム ハーツ)が できるまで

2014年の秋、リアという女性が建具職人のクリストファーに相談の連絡をしたのがすべての始まりでした。

言語療法士であるリアは、慢性的な股関節障がいがあり、常に松葉杖を使用していました。彼女は病院が提供するアルミニウムの松葉杖を好まず、18歳のときに「Runestokken(ゴーネストックン)」という小さな会社からスタイリッシュな松葉杖を購入しました。しかし、交換する必要が出てきた20年後、会社はすでになくなっており、リアはふたたび新しい杖を探さなければならなくなってしまいます。

リアは知り合いに会うたびに松葉杖を修理する人や職人を知っているかどうか尋ね、とある家族から何でも修理をすることのできる熟練の建具職人、クリストファーの連絡先を入手しました。
リアはすぐにクリストファーに電話をかけ、助けを求めました。そのとき彼はお客さんの家に新しい窓をつけようとしていましたが、快くこう返事をします。

「もちろん。30分で家に帰れるから、そこで話そう」

このとき、リアはすでにクリストファーの家の前に車を停めていました。
クリストファーとリアはコーヒーを飲みながら松葉杖について対話をし、2人で理想の松葉杖のデザインを描きはじめ、大いに盛り上がります。そしてクリストファーは賢明に結論を出しました。

「あなたの松葉杖を直すことはできない。ただ、新しいものをつくることはできる。問題はなにもないよ、ただの棒とハンドル、アームレスト(肘掛)をつくればいいのだから…。」

しかし、最初のプロトタイプ(試作品)ができあがったのはその8ヶ月後のこと。


松葉杖というものは見た目よりとても複雑であり、そのうえ人体にもろに影響を与えます。彼は作業をしながらそれを痛いほど実感し、“ただの松葉杖”を乗り越えなければならなくなりました。そして、親友である技術者のトーマス・ハーツに協力を要請したのです。
金属のスペシャリストであるトーマスは、クリストファーが描いた杖のラフを見ながら図面を作成し、モデルを試し、2人で問題をひとつひとつ解決していきました。さらに自宅の庭先にアトリエを建て、そこに大掛かりなマシーン(CNCルーターとCNC旋盤)を設置し、作業環境を整えたのです。

ようやく最初の松葉杖を市場に出す準備ができたのは、リアがクリストファーの家で最初のコーヒーを飲んだ2年後のこと。さらに、リアのための松葉杖の図面から4つの異なるモデルを生み出します。テストの過程でリアと職人たちは多くのコーヒータイムを共にし、今ではすっかり親しい友人となりました。

そして2017年、クリストファーとトーマスは互いの名前の一部(Kristoffer “Vilhelm” Pedersen,Thomas “Hertz”)を取って、「Vilhelm Hertz(ヴィルヘルム ハーツ)」というブランドを立ち上げたのです。

取り扱いMODEL

Model : Split / スプリット

彼らが初めにデザインしたクラッチの一つです。
クラシックな脇の下に挟むタイプのものに着想を得ました。この従来型松葉杖はヨーロッパよりも、アングロ・サクソン諸国の方が一般的です。脇下部分を無くし、90度回転させることにより、ハンドルを支えるためのアルミニウムパーツを取り付けるスペースを作、ヨーロッパで主流な腕で支えるタイプの松葉杖、ロフストランドクラッチへ変形させました。
この杖は、デンマークのクラシックな家具から着想を得ています。使われる素材に、多くの価値を見出せるようにしました。
素材は美しく丈夫で、長く使うことができます。“良いバランスで使う”ので、「心地が良い」のです。

Model : Mumi / ムーミ

この奇妙な名前は、彼らが初めてプロトタイプ(試作品)を作ったときの出来事から由来しています。
ハンドル部分が偶然、スウェーデンのコミック「ムーミン(デンマーク語でMumi)」の頭に見えたのです。
こちらもクラシックなデンマークの家具から着想を得ています。このMumiで歩くと、自然に前に進むような感覚が楽しく心地良く、まるで手を取ってもらいながら歩いているようだという意見もあるほどです。

Model : Poker / ポーカー

この名前はすらりとした黒い金属部とオークの組み合わせ、すっきりとしてシンプルなデザインから名付けられました。
この杖は、カフを支える部分にスチールを使用しているため、パワフルな使い方に一番適しています。
スチールを「Hot black oxide」というプロセスで、黒色に酸化させ、使うごとに変化する仕上げを施しています。

Model : VH stick / VHステッキ

このステッキも木とカーボンファイバーの組み合わせによって、驚くほどの軽さになっており、毎歩ごとに杖を持ち上げる腕への負担を軽くしてくれます。また、カーボンファイバーのしなやかさによって、肘や肩にかかる負担も軽減してくれます。

Key Holder

1本の鍵が取り付けられるキーホルダー。
一つひとつ丁寧にハンドメイドで作られています。手に力が入らない方でも簡単に鍵が開け閉めできるように、大きめのホルダーになっています。革の紐に手を通せばなくす心配もありません。

おまけ:杖の基礎知識

Vilhelm Hertzが扱うのは、ロフストランドクラッチ(前腕部支持型)とT字杖の2種。
ただ、杖は大きく分けて6種類あります。

①|ロフストランドクラッチ(前腕部支持型)

ロフストランドクラッチと呼ばれる型。50%~ 80%の体重を支持できます。握りと前腕の2点で体重を支えるため、握力が弱く手首に力が入りにくい方に有効。カフの形状として、U字カフとO字カフがあります。U字カフは腕にはめやすいけれど安定感に欠け、O字カフは固定性は強いが転倒した際に腕から外れにくいので、事故に繋がりやすくなります。
【適している方】
下半身麻痺、股関節症、片麻痺、捻挫、下肢切断、下肢に体重をかけられない方等

②T字、C字型杖

日本でも見慣れた一般的な杖。杖で支持できる体重は20%程度。歩行時のバランスを取るための道具で、杖がなくても歩行ができる人の補助程度で使用します。C字型は持ち手がまるいので、腕にかけてその他の動作ができます。
【適している方】
下肢の支持性が低下している方、足腰が弱ってきた方

③多脚型杖

持ち手は一つですが、脚が3~4本に分かれている杖。着地面積が広いので、安定度は高くなります。
右利き・左利き用があります。体重をかけても倒れにくいので、立つ姿勢の悪い方の歩行訓練に適しています。ただし凸凹のあるところではかえって不安定になるので注意が必要です。
【適している方】
片麻痺の初期歩行訓練や変形性股関節症、関節リウマチの方

④脇固定型

典型的な松葉杖であり、脇と掌で体重を支持します。両側で運用した場合、体重の80%を支持できるとされますが、
実際の現場では安全率を見込み、50%以下で運用されます。上肢が健常で一定の筋力があり、バランス感覚があることが必要です。脇の下を圧迫するため血流が悪くなり、手のしびれが起こることもあるので歩行時に脇をしめて脇当てを挟むようにして体重を支えるようにします。転倒のリスクが高いです。
【適している方】
下半身麻痺、骨折、捻挫、股関節症、下肢切断などの障害のある方

⑤カナディアンクラッチ(上腕三頭筋型)

カナディアンクラッチと呼ばれるこの型は、
見た目は脇固定型とあまり変わりませんが、脇ではなく上腕三頭筋と脇で脇当てを挟み、体重を支持するものです。

⑥プラットホームクラッチ(肘支持型杖)

リウマチ杖ともいうこの杖は、上端に横木を付け、その先端に縦に握りが取り付けてあります。握り部分を握った腕を横木の上の弾力性のあるバッドにのせ、マジックバンドで固定して肘全体で体重を支えます。やや重く肩関節などへの負担があるため、実用性の検討が必要です。
【適している方】
腕で体重を支えるため、リウマチや手指・手関節に強い負荷をかけられない方、肘関節などに障害があり自由に伸ばせない方