このコラムは池上のまちで参考にしたいと思った各地で活動している方から寄稿していただいたものです。
「脳内大阪観光」
私はローカル・カルチャーマガジン「IN/SECTS」という雑誌を大阪で年に数回発行している。そして先月、緊急事態宣言真っ只中に「大阪観光」がテーマの最新号をリリースした。“こんなときに”というツッコミは承知の上で、案の定尊敬する大阪の書店店主の方には、「あいつはこんな時期に何を…」と知り合いとのオンライン飲み会の場で酒の肴にして頂いたと聞いた。光栄なことだ。
そんなツッコミどころ満載(?)の号をこのタイミングで発行したのには理由がある。それは、あしたのためだ。「あしたのジョー」で丹下段平がいうところの“ジャブ”だと思う(主人公・ジョーが少年院に収監されているときに、出てきてからボクサーにすべく手紙でボクシングのイロハを教えるエピソード。あしたのためにその1がジャブ)。つまり、これだけで強くなったり見違えることはないけれども、やることで確実にあしたは変わる。そして積み重ねることで、未来は大きく変わる、そんなところだ。
今号は、「こんな大阪知らなかったんじゃない? みんな遊びに来てね」のつもりで作ったのだが、完成する頃には図らずも編集部にとって「大阪はこういう可能性があるのでは?」と自己認識が高まった号になった。読んでいると脳内で観光をしつつ、自分自身の地域や家を顧みることにもなると期待している。
あしたの道を決めるのは自分自身で誰かではない。とはいえ、はっきりものを言ってくれて決めてくれる人についていきたくなる気持ちもあるだろう。そんなときに、なにをよりどころにするかは、自分の足元にしかないだろうと思う。
だから今、私たちには今号の「大阪観光」が必要なのだと感じている。これまでに見えていたステレオタイプの大阪観なのか、それよりもオルタナティブな大阪像を見た上で、次の未来に進むことがコロナ以降のおもしろさにつながっていくのではないか、と思う。