ちょうど1年前のHOTSANDO(Issue10)を読み返していたら、取り壊された上州屋さんから出てきたオブジェに纏わる記録であった。「春日」とかいてあった杯を巡るまちの歴史の話を元に、昔から営まれているお店を尋ねたら見せてもらった写真や地図なんかがどんどん出てきた。
折角だからと情報を持ち寄っての座談会を開いたっけなあ。

これは本誌には載せることができなかった続・上州屋の記録である。

HOTSANDO Isseu10の続き

結局ここでも「春日」については何もわからなかったが「自由雲」さんの話を聞くことができたのが収穫であった。後日、プロジェクトを運営している敷浪さんと小田桐と堤方4306で話す機会があり、このことをネタにプロジェクトのこれからのことを話してみることにした2020年の2月。

—————————————————————

堤方4306にて対談
中嶋(な)、敷浪(し)、小田桐(お)、アベ(あ)

(な)池上本通りの呉服屋の上州屋さんが閉店することになって、お店の中のものを近所の方に持って行ってもらうっていう日があったのよ。で、小田桐が地元の人から声をかけてもらって行ったんだって。そしたらお店の名前が記されたお皿とかを見つけて、気になったからこれについての由来を聞くことからはじめています。

(お)この写真も借りて来たんだけど本通りで撮影した昔の写真。

(し)突き当りが石田ガラスかなあ。

(な)それで、僕たちが池上にきて1年くらい経つから一つの節目としてプロジェクトのことを考えてみる機会を作りたいなあと思ったんです。終わってしまうこととこか、上州屋さんから見つけたお皿を元にまちの人と関わるようなことをしていて色々新しい発見もあって、そこから始まる未来のこととかを少し話したいなあというのがこの会です。

(し)アベさん知ってました?このプロジェクトが急展開だったの。

(あ)3人と会ったのは何月だっけ?

(し)あれば3月頭くらいかな。工事を始める前に挨拶しようってので。蓮月の2階で会ったよね。

(あ)うん、結構直前だったよね。

(し)僕ら自体に話が来たのが12月の初旬くらいで、12月中にやるかやらないかと決めないといけないってなってて。で、東急さんはそもそも僕らが何者かがわからない状態だったからその説明もしないといけなくて。そこからだね。

(お)僕らに初めて会う前は東急さんから何て言われてたんですか?

(し)突然降って湧いたように話が出たでしょ。

(あ)今だから全部話すと、まず入居者を探していると。地元の人がいいのか、外の人がいいのかとか。最終的に連絡来たのが、あなた達が候補になってるという情報は来ていたかな。で、決まっていうところでサイト見たりとかどんなことやってる人たちかとは調べていたかな。

(し)実際出来てから印象どうでしたか?

(あ)まあ最初はいけ好かないですよ。(笑)
まあそれは冗談だけど。最初に蓮月の2階で会ったじゃない。年齢も同世代くらいの人たちがやってて、どんな活動していたかってのもわかってはいたんだよ。僕からしたら今みたいな場所を持つのが初めてのことでやり始めて半年くらいで君たちが来てさ。でもLPACK.は今まで街でやるいくつかのプロジェクトをやってるでしょ。その経験則ってのは1回目の人からしたら体験したことないものいっぱい積み重ねているわけだから、それが立ち上げから見れるってのはいい機会だったよね。
で、一年見てて仮に僕に頼まれてもこういうことは出来なかったなあと思うし、小さいスペースと大きいスペースの違いとか、ちゃんとカフェとしてやるとかね。ここもコーヒー出したりお酒も出しているけど、ここに入る人とSANDOに入る人の違いとか見えたかな。比較材料がないと出来ないことだったのでそれが見れてよかったかな。普通に利用者だしね。

(お)本当に常連さんとしてのキャラクターがアベさん含めいるので、その時の雰囲気がいいですよね。常連さんと新しく訪れた人の交流もあったり。

(あ)SANDOで何個めのプロジェクト?

(お)スペースとしては5,6個目くらいだと思います。最初の横浜の黄金町時代は敷浪さんもだし、SANDOの店長やってる天野くんもお客さんとして来てたしね。

(し)そう、で竜宮美術旅館っていうスペースをやる時にリノベーションで僕が入って。そこが終わってからLPACK.は外に出て行ってしまったので。僕はそのあとふつふつと事務所構えていました。

(な)あの街は7年もいる場所じゃないですよ笑。

(し)本当に後半はね。どんどん人いなくなるし、新しい人と馴染めないし笑。で、そこから出るタイミングで一緒に借りようってことで横浜に拠点を持ったよね。

(あ)話を逆に聞きたいですけど、実際いくつかプロジェクトやって来て今SANDOを1年やって来てどうですか?この街でやって来た印象。

(し)中身としては、自分たちの空間を使って何かまちに訴えかけるっていうこととかだと他のまちに比べて1番ダイレクトに動いているような気がするなあ。どう?

(な)確かに反応は早い気がする。これプロジェクトを立ち上げる前にもまとめたんですけど、池上のまちって今目に見える問題がないんですよ。僕らが今まで関わったところっていうのは人がいないとか、寂しいとか。そういうマイナスポイントがあるんですよ。で、そういうところに対して僕らしいアプローチをしていくのが多いんですけど、池上はマイナスからのスタートではなくて最低でもゼロからのスタートっていうところは違いでありますね。

(あ)現状はそんなに困っている感じは見えない、でもこの先困るであろうっていうのが予想できる感じだよね。

(な)そう。アベさんみたいに既にまちにいる面白い人たちがいるから、そういう人たちとの接点が多いってのも反応が早いってことの一つですね。今までのプロジェクトではまずその面白い人たちを可視化していくっていう作業があったので。

(し)そうだね、リサーチの期間が長くなるし、NPO団体等が間に無いってこともダイレクトになるってことの一つでもあるね。逆にスピード感を持ってやらないと追いつかない感じもあるよね。ここだったらどんどん新しいことが起こるから。やろうとしている規模も大きくなっているってこともあるよね。

(な)まず今年何ができたかっていうことなんですけど”ゑもん”っていうプロジェクトのキーワードがあるじゃないですか。コミュニティだったり、特技の集まりみたいなものに愛称を込めて呼ぶことね。これの浸透はまだこれからですね。

(あ)例えば、こないだ纏(まとい)のペーパークラフト作った時の集まりは、「纏のペーパークラフトゑもん」みたいに呼べるってことだよね。

(し)そう。その人たちが部活みたいになったり、商品が作られたり、お店になったり、そういうのが勝手に自走していくのはまだまだこれからかな。1年目は、まず僕たちが自己紹介も含めた年だしね。色んなことが巻き起こってる状況は出来ているような気がします。

(お)動いているなあって思うのは「クロスカウンタートーク」って福祉のイベントやったじゃないですか。発起人の宮田くんが違う場所でもそういうテーマのイベントをやっていたりするし、トークに来てくれていた人が今度展示したいって流れになったり。”福祉ゑもん”の動きはあるかなあっていう印象かな。

(し)SANDOでやってるわけではないけど派生している流れが見えるのはいいですね。

(な)“ゑもん”ってキーワード出した時に“もう一つの名刺”ってキーワードも出したけど、本業とは別の側面をどんどん可視化していきたいですね。アベさんだったら本業はデザインだけど、配信も場の運営もしているっているところ。

(し)年配の人でおしゃれな人が多いからそこも掘り下げたら面白いよね。

(な)おしゃれな人はNEWSANDOでも展開しましょうか。SANDOにWEMONCARDの実物を貼ってくってのもやりたいですね。スーパーにある持ち帰れるレシピみたいなもの。カード状になってて困ったことがあったら誰を訪ねればいいかとわかるもの。

(あ)あ、俺ここ立ち上げる時に何となく思っていた。まちに色んな人がいて、悩み事があったら仕事じゃなくても解決ができるスキルがある人っているじゃない。でもそんな人探すのって電話帳にも載ってないし。まちの情報が集約されたスキルマップがあったらいいなあと思ってた。あのことを相談したかったらあそこに行けばいいなっていう情報が集約されたものがあるといいなあって。
例えば引っ越して来た人が色んなことを知らないわけじゃない。ちょっとづつ知ってるけど、でもそこがポータルでわかるっていうのがあると凄い住みやすいってのは出てくると思うんだよね。

(お)今日も何組か引っ越して来ましたっていうお客さん来ましたよ。

(し)引っ越して来たら移住者だね。「池上に移住しませんか」っていうキャッチフレーズいいよね。

(あ)それいいね。

(な)僕の友達が初めて池上くると小旅行しに来たみたいって言いますね。

(あ)電車の感じとか、乗り入れがないっていう路線もそういう感あるよね。俺が言ってたのは「いなたいまち池上」。いなたいって方言かな、田舎っぽさがあるホッとするっていう意味でさ。

(な)駅前にキャッチフレーズ書きたいっすね。「何とかのまち池上」ってやつ。

(お)「100年後が面白いまち池上」

(し)最終そこだよね。布石があるといいよね。

(な)そもそも標語募集するのも面白そう。

(あ)商店会の店舗がそれぞれが考える標語を店先に掲げるのもいいね。あの店主はこういうまちになって欲しいんだって見えるとか。池上が一個それが見せられたら他の商店街に派生するかもね。

(し)そういうイベント化してても面白そうだよね。商店会がエリアで分けられてるけど理念で繋がる商店会みたいな集まりが作れたりするし。

(あ)今回みたいなこういう話ってあまり聞くことないからラジオ的にやった方がいいんじゃない。決まったことは決定事項しかわからないけど、紆余曲折してるのが見えた方が受け取る側に準備できる時があるとよりいいよね。

(な)ちょうどラジオの話は出ていて、来年度のHOTSANDOはエピソードトークみたいなものをラジオでやりたいねって。あとはじゃんけん大会もそろそろやりたいよね。決勝は本門寺の境内で天下一武道会みたいなステージで。

(お)NEWSANDOでのゲームで勝ったら予選出れる権利もらえて、まちの中で何勝かすると決勝トーナメントいける感じ。

(し)まちの中でじゃんけんやってるって全然みない風景で何かいいよね。

(な)色々出てきましたそろそろ時間ですね。来年度はラジオ、WEMONCARD、じゃんけん大会、標語をやっていきたいですね。

—————————————————————

たまたまwnicoのひろみさんから声をかけてもらったのが1月中旬。建物の存在は知っていたけど、ずっとシャッターが閉まっていて中の様子を見ることはできなかった。
日曜日の朝、シャッターが開いて暖簾がかかった風景は、まちのあるべき風景であった。
ただ上州屋さんに行くつもりだったが、ひょんなことから少し大きな話に発展した。
引き続きオーパーツの一つである「春日」については聞いていくことにする。
「100年後の池上ってなんだ?」ってのもみんなと考えていくことが1番楽しいんじゃないかと思った。歴史を紡いでいく作業が僕たちにとっては新鮮で新しいことで、未来がまだ体験したことのない何かだとしたら、まちの人から教えてもらった物事は僕たちにとっては未来のことだったのだ。終わりを考えてみると、自然と未来のことへ繋がっていたのを時間した数週間。明日からも知らないことを探しにまちに出てみるとしようかな。

HOTSANDO 編集部

Hi, How are you?

HOTSANDO Issue19よりババーンとコラムページが増えました!

HOTSANDO 編集部

Hi, How are you?

続・上州屋の記録
(HOTSANDO Issue18)

HOTSANDO 編集部

Tomorrow Never Knows

「煮るとスープができる不思議な石を持っているんです。鍋と水だけ貸してください」

山田 毅 Tsuyoshi Yamada/美術家 ・只本屋 代表 ・ 副産物産店 共同運営

Tomorrow Never Knows

HOTSANDO Issue12 あとがき

丸山亮平(HOTSANDO 編集チーフ)

Tomorrow Never Knows

麻田 景太 Keita Asada/五条ゲストハウス

Tomorrow Never Knows

山田 毅 Tsuyoshi Yamada/美術家 ・只本屋 代表 ・ 副産物産店 共同運営

Tomorrow Never Knows

八木 麻子 Asako Yagi/ガラス作家

Tomorrow Never Knows

矢津 吉隆 Yoshitaka Yazu/美術家・kumagusuku代表

Hi, How are you?

『やあ、そっちはどう?』
真似したいほど魅力的なまちで活動する方との対談記録『Hi,How are you?Vol.3』は松陰神社エリアで、ビールとパンのお店『good sleep baker』を営む小林由美さん。
世田谷線って池上線と似たローカル線だけど、めちゃくちゃ盛り上がってる印象。でもそれが観光名所があるとかではなくて、生活と地続きで自然体な感じがいいなあと思っています。池上に来たこともある小林さん、松陰神社にお店を構えたきっかけの話を始まりに、住んでるまちのこと、池上のことについて話を聞きました。
ちょっと汗ばむ季節の始まり、美味しいビールを飲みながらの対談。時節柄、東京都知事選挙の話がひとしきり盛り上がったあとのお話です。

小林由美/good sleep baker
中嶋哲矢/L PACK.
フクナガコウジ/図案家

小林 由美 Yumi Kobayashi/good sleep baker

Tomorrow Never Knows

近所の弁当屋で僕は言う。

「サケ弁1つお願いします。」

飯田 純久 Yoshihisa Iida/イイダ傘店