このコラムは池上のまちで参考にしたいと思った各地で活動している方から寄稿していただいたものです。
ロシアのシベリア北部の小さな町ベルホヤンスクで、華氏100度(摂氏約38度)を上回る異常な高温が観測されたというニュースを知ったのは、2020年6月21日の日曜日のことであった。この日は北半球の日本では夏至にあたり、1年のうちで最も昼(日の出から日没まで)の時間が長い。現に夜7時を回っても外はまだ明るく、梅雨梅雨言いながらも雨の降らない今年の京都は、ぼんやりとした空気が夏至の夕暮れに流れていた。
最近は副産物産店という、廃材の循環やそれらの活用をしていくプロジェクトをやっていることもあって、地球環境のことにも興味があったりするのだが、少し前にオゾン層の破壊があるからフロンガスはやめようとか、排気ガスによって温暖化が進んでいるとか、プラごみを無くそうとか、そういう話は頭ではわかっていたけど、実際には夏がどんどん暑くなってるなとか、異常気象と毎年のように言われるようになって、災害大国日本とかそういう言葉に慣れている自分がいて、異常でない年の方が珍しく、どんどん変わっていく地球に対して感性が乏しくなっているよな、とかとか、そんなことを考える。とはいえ、いくら考えても腹は減るし、生活は続くので、ちょっとレジ袋をもらわないとか、少し行動したりするくらいで、家に帰ればやっぱりピッとエアコンをつけてしまったりするのである。
それでもプロジェクトのおかげでちょっとは立ち止まる機会が増えた。特に新型コロナウイルスとかそういう目に見えないものを相手にして、家にこもっていると、向かう方向は健康志向で、少しでも元気な身体とか、身体に優しい食べ物とか、そういうものを意識しようと心がけて行動をするのだが、街で少し走ってみるとそんな人々ばかりで、なんだかそこからもソーシャルディスタンスをはかりたくもなるのです。
一方、京都のずっと北の「世界の寒極」と呼ばれるベルホヤンスクでは、華氏100度以上という気温が観測されて、それは北極圏で観測史上最高のもので、ベルホヤンスクの6月の平均気温は華氏68度くらいらしく、今回の記録はそれを大幅に上回ったことになるんだそうだ。
シベリアでは今年異常な温度上昇が多発していたのだが、シベリアのような高緯度の地域では、地球全体の平均に比べて2倍以上のペースで気温上昇が進行しているんだそうだ。NASAの研究によると、地球の極点付近では大気の流れの影響で、温暖化が急激に進んでいるらしく、極点には大気や熱帯地方から運ばれる温かい空気が集まってくるからで、今後はさらに壊滅的事態が生じることになるらしい。NASAが言うのだから間違いないか、何かの陰謀で、何かを隠すためにそういうことを言うのかもしれない。どちらにしても地球が危機的状況なのは変わらないのかもしれない。
北極圏での温暖化は、永久に凍り続けているはずだった永久凍土の融解を引き起こしている。永久凍土が溶けると、地下に閉じ込められていた二酸化炭素とメタンが放出される。これらの温室効果ガスはさらなる温暖化と、さらなる永久凍土の融解を引き起こす可能性があるんだそうだ。カナダやロシア、スカンジナビア諸島に生息する生き物は、ブラジルやインドネシアなどの低緯度地域の生き物よりも、極めて大きな温暖化による影響を受けることになる。どこの海の向こうの話のようにも聞こえるんだが、その永久凍土の融解や温暖化の先に新たなウイルスの蔓延の危険性もあると言うのだ。
部屋にこもり、携帯でこのニュースを検索しながら、もしかしたら今回の新型コロナウイルスは、回り回って過去の自分たちが行ってきた何かしらに因果関係があるのかもと考えてみた。あの夏のうだるような暑さの時に、ピッとつけたあのエアコンが原因かもしれない。そう考えてみたのだ。もちろん僕だけではなく、みんながピッてしたのだから連帯責任ではある。でもそこに加担したことをこんな夏至の夜のエアコンの効いた部屋で思い知るとは思いもよらなかった。
携帯が教えてくれるニュースでは「北極地方における今回ほどの劇的な温暖化は、2100年まで起こらないものと考えられていた。しかし、温暖化の進行による気温の上昇は、これまでの予測を超えるレベルで進んでいることが明らかになった」と締めくくられていた。
「地球が警鐘を鳴らしている」ハッとそんな言葉を思い出した。まだ見ぬあしたの地球はどうなるんだろうか。僕らはここで何をしたらいいのだろうか。とにかくNASAの次の見解が気になる、そんな夏至の夜だった。今夜くらいは扇風機を回そうと思う。